もし現在世界で起きている深刻な問題には何がありますか
と聞かれたならばどんな問題を思い浮かべるでしょうか?
人々の命を奪ってしまう戦争を引き起こす
各国の外交問題でしょうか。
世界各地で甚大な被害をもたらす自然災害や
異常気象の原因となっている環境問題でしょうか。
科学技術が進む現代にあっても、食糧が十分に得られずに
苦しんでいる人がいるという格差問題というものがあります。
日々の生活費という経済的な問題や、就職・就学に関する問題、
高齢化や病気の家族の世話など
もっと多くの問題が浮かぶかもしれません。
このように、
私たちは本当に多くの問題に囲まれて生活しています。
誰もがこれらの問題をなくしてほしいと
強く願っているに違いありません。
世界中の多くの人が求めているにもかかわらず、
多くの国の政府がその必要に応えることができていないのは
なぜでしょうか?
聖書の中には、
その根本的な理由の1つが次のように述べられています。
「エホバ,私はよく知っています。
人は自分の道(生き方)を定めることができません。
自分で自分の歩みを導くことができないのです」。
(エレミヤ10:23)
この聖句は、人間には自分たちを正しく治める能力が
ないことを示しています。
人間を造られた神エホバは、
人間を正しく治める能力を人には与えていないのです。
例えて言うならば、
人が水の中や宇宙で生きるように造られていないように、
人を支配するようには造られていないということです。
できないことをしようとしてきたので、
世の中には理不尽に思えることが多く、
人々は色々な問題に苦しんできました。
「これまでずっと,人は人を支配し,
人に害を及ぼしてきた」とある通りです。
(伝道の書8:9)
今ある問題は引き続き解決されることなく、
永遠に人々を苦しませるのでしょうか?
人は誰に支配してもらえるように造られていたのでしょうか?
聖書の中には、
このような疑問に対する答えが載せられています。
まず、人間の政府による支配がどのようになっていくのか
という点についてこう預言されています。
「この王たちの時代に,
天の神は決して滅ぼされることのない王国を建てます。
その王国はほかのどんな民にも渡されません。
これらの王国を全て打ち砕いて終わらせ,
その王国だけが永遠に存続します」。
(ダニエル書2:44)
ここに書かれている夢、
この言葉はどんなことを意味しているのでしょうか?
まず「この王たちの時代に」とあるので、
地球上でそれぞれの国が
治めている時に神の王国を建てるということが分かります。
この王国が他の国に統治権を奪われることはありません。
そして、この神の王国と世界の国々との間に戦いがあって、
神の王国は全ての国々に勝利して終わらせます。
このようなことが実際に起こり得るのでしょうか?
この神の王国はどんな段階を踏んで
世界全体を治めるようになるのでしょうか?
ダニエル書にある記述の中から紐解いていくことができます。
誰が人間を治めるのかを決めるということについて、
エホバはバビロンのネブカドネザル王に
統治権に関する夢を見せました。
そのことがダニエル4章の中に記されています。
どのような夢だったでしょうか?
「大地の真ん中に、非常に大きい木が立って」います。(4:10)
「頂が天に達して,地の果てからも見える」とあるので、
本当に大きな木であることがわかります。(4:11)
美しく実が豊かになっていて、全ての生き物が
その木から必要なものを得ることができます。(4:12)
しかし聖なる者が天から下ってきて「この木をり倒し」
生き物たちを追い払うように言います。(4:13,14)
そして「切り株と根は」
「鉄と銅のたが」をかけられ地面に残されます。(4:15)
心は変えられ「獣の心が与えられて,
7つの時が過ぎる」と述べられています。(4:16)
「至高者が人間の王国の統治者であり,
ご自分の望む者にそれを与え,
最も立場の低い人をさえその上に立てるということを,
人々に知らせるため」であるとと告げられます。(4:17)
この夢を見たネブカドネザルは
一体どんなことを意味しているのか分からず、
この夢の解き明かしをダニエルに求めます。
そして、神はダニエルにこの夢の意味を説明させました。
「それは王ご自身です。
あなたは強大な方となり,威光が天にまで達し,
支配が地の果てにまで及んだからです」。(4:22)
この大きな木はネブカドネザル王のことを指していました。
ですので、この後の謎の解き明かしをすることは、
ダニエルにとってとても勇気が必要だったかもしれません。
「あなたは人々の中から追いやられ,
野獣とすみかを共にし,
雄牛のように草を食べることになります。
天からの露にぬれるままになり,こうして7つの時が過ぎます。
そしてあなたは,至高者が人間の王国の統治者であり,
ご自分の望む者にそれを与えるということを知るのです。
…切り株と根は残しておくようにとのことでしたから,
天が治めているということをあなたが知った後に,
王国は再びあなたのものになります」。
(4:25,26)
このようにダニエルは夢を明かしていきました。
そして解き明かし通りに事が起きていくことになります。
天から声が聞こえて
「王国はあなたから取り去られました」と告げられ、
ネブカドネザルは野獣のように生活するようになります。(4:31,32)
そして「7つの時」が過ぎると「正気に戻り」、「王国の栄光」や
「輝かしい威光も元に戻った」と言います。(4:36)
ネブカドネザルが見た夢と
この夢の実現から何がわかるでしょうか?
それは誰が人間を治めるかはエホバ神が決めるということです!
エホバの考えに沿って物事が運ばれていったのです。
この夢は、私たちにも影響を及ぼします。
この夢の中で預言されていた出来事というのは、
後の時代に大規模に起きることになっていて、
それには神の王国の設立が関係しているからです。
この夢が単にネブカドネザルの身に起きたことを予告しただけ
ではなかったと言える理由について5つの要素を取り上げます。
1つ目はタイミングです。
神がこの夢を見せたタイミングはイスラエルという
当時の神の王国が滅びて間がない頃でした。
歴代第一29章23節に「ソロモンは父ダビデの代わりに王として
エホバの王座についた」と書かれています。
このエホバの王座についたというのは、
平和の統治がエルサレムにいたイスラエルの王たちによって
行われていたということを表しています。
エホバの統治を表していたイスラエル王国が滅びて
間もない頃にこの夢を見せたということは注目に値します。
2つ目は人物です。
神が夢を見させたネブカドネザルという人物は、
エホバの統治を表していたイスラエル王国を
終わらせた人ということで、
神の王国に関してとても重要なことを行った人物でした。
3つ目はメッセージです。
夢そのものの中で述べられていた点を
思い起こすことができます。
ダニエル4章17節の中ほどには
「至高者が人間の王国の統治者」であると述べられていました。
夢のメッセージは、人間の国全てを統治する権利を
神が持っているということでした。
「至高者」つまり神が人間の王国の統治者であることに言及されていることから、 単にネブカドネザルだけではなく、
神の統治権つまり神の王国にも関連があることが分かります。
4つ目はダニエル書のテーマです。
ダニエル書に繰り返し出てくるテーマの1つが
神の王国の統治です。
例えば2章には巨大な像の夢で、
世界強国を砕く神の王国について扱われています。
またダニエル7章13、14節では、
王国の王について書かれています。
ダニエル書の預言は終わりの時が関係しています。
ダニエルが見聞きした事柄は「終わりの時まで秘密にされ」
終わりの時になって初めて
全貌が明らかにされることになっていました。
(ダニエル12:4,8,9))
タイミング、人物、 メッセージ、テーマ、終わりの時
という点から、この夢に出てきた木は、
ネブカドネザルの統治のことだけではなく、
神の統治を表しているということが言えるのです。
ではネブカドネザルの見た夢が、
今度は神の王国にどのように実現するのでしょうか?
エホバの統治はエルサレムにいた
イスラエルの王たちによって行われていました。
エホバはダビデの子孫の1人が
王になって永遠に統治すると約束していました。
(サムエル二7:16)
一方でエホバの預言者エゼキエルは、
次のように予告していました。
「主権者である主エホバはこう言う。
『ターバンを外し,冠を脱ぎなさい。
それらがそのままになることはない。
立場が低い者を高くし,高い者を低くしなさい。
私は,破滅,破滅,破滅をもたらす。
法的権利を持つ者が来るまで,冠は誰のものにもならない。
私はその者に冠を与える』」。
(エゼキエル書21:26)
ここではまずターバンを外し、冠を脱ぎなさいと願っています。
これはエホバの王座における王が除かれること、
つまりイスラエルの王たちによる神の統治を
終わらせること意味しています。
そして、エルサレムを中心とする「高い」ユダ国は低くされ、
異国の人々の勢力が「高く」されていく
ということを述べています。
さらに、法的権利を持つものが来る
つまり新しい王が任命されるということを予告していました。
この予告にある王家が取り除かれるということは、
ネブカドネザルが紀元前607年に
エルサレムを滅ぼした時に実現しました。
これによって神の統治が中断しました。