愛は憎しみに勝てるか

私たちは今、戦争や紛争のニュースを
毎日のように見ているのではないでしょうか。
また様々な民族間で、
長い歴史の中で培われてきてしまった偏見とか憎しみによって
時々暴力が発生しているのを私たちは見聞きしています。

人間にはそういった傾向があることを十分知っていますが、
一方で人間にはそれとは正反対の性質も
あるのではないでしょうか。
つまり人を愛するというものです。
困っている家族とか友人のために、
自分の持っているものを喜んで与えたり、
また助けを与えたりというのは多くの人々がしています。
きっと皆さんもそのようにしておられるのではないでしょうか。

愛によって可能になる平和な状態を
誰もが望んでいると言えるでしょう。
これに異論を唱える人はいないはずです。
では、人間にはそういった特質もありながら、
なぜ世の中に憎しみが今まさに溢れているのでしょうか?

聖書は憎しみと暴力が
どのようにして始まったのかを明らかにしています。
エホバが人間を創造された時そこに憎しみは存在せず、
完全に平和な状態が見られました。
しかしそれは長く長く続きませんでした。

聖書はサタンという悪魔の存在を明らかにしています。
(ヨハネ8:44)
エホバに対する反逆の精神から、
エホバが理想とする環境とは
真逆の状態を地球上に作り上げてきました。
人間は愛という特質を持ちながらも、憎しみや暴力の方が今
世界中に溢れているその最大の原因がこの悪魔サタンです。

現状を見ると、
愛より憎しみの方が勝っているように感じるかもしれません。
明るい未来を期待することはできないのでしょうか?
聖書は間もなく愛が憎しみに完全に勝利する
ということを明らかにしています!

最初の人間2人がエホバに従い続けるならば、
平和な状態は永遠に続くはずでした。
しかしサタンの策略のためにそうはなりませんでした。
しかしエホバは、
反逆した2人から生まれて増加していく不完全な人間を
心から愛しておられ、見捨てることはされませんでした。
それで愛の動機として
新たなプランを立てたことを宣言されました。

「そして私は,あなたと女の間,
またあなたの子孫と女の子孫の間に敵意を置く。
彼はあなたの頭を砕き,
あなたは彼のかかとに傷を負わせる」。
(創世記3:15)

この言葉はエホバが蛇に語っている流れとなっています。
かかとを砕かれるというのは確かに大怪我ですが、
致命傷とはなりません。
しかし、頭を砕かれるならそれは命を失うことを意味します。

エホバは蛇に語りかけたとありました。
けれども動物は言葉を理解することはできません。
この蛇は理性を持つ存在だったに違いありません。
啓示の書12章9節でサタンは「初めの蛇」と呼ばれています。
サタンは見えない体で蛇の背後に回って、
あたかも蛇が話しかけているように話しかけエバを騙しました。

聖書では、ある人と同じような考え方や行動する人のことを
その人の子孫と呼ぶことがあります。
それで蛇の子孫というのは、サタンと同じようにエホバ神や
エホバに仕える人に敵対する天使と人間を表しています。
創世記には、ノアの時代にサタンの考え方に魅力を感じて、
天での持ち場を捨てて地上に降りてきて、
人間の体を着けた天使たちの記録があります。
その天使たちは地上で猛威を振るい、
その影響を受けた人々が
極めて暴力的になったという記録も残されています。

この聖句に出てくる「女」がエバであるはずはありません。
アダムとエバは子孫を設け、
それは不完全になった後のことだったため、
子孫は不完全さを受け継ぎました。
不完全な人間が自分たちより遥かに強力な
悪い天使を滅ぼすことはできません。
啓示の書で明らかにされている通り、
「女」はエホバに忠実に仕える天使たちで構成される
エホバの組織の天の部分を表しています。
では「女の子孫」は何を表しているでしょうか?

エホバは長い歴史の中で、ご自分の約束をどのように果たすかを
徐々に明らかにしてこられました。
この子孫は創世記22章に記録されている通り、
アブラハムの家系から出ることがまず予告されました。

女の子孫は蛇である悪魔サタンの頭を砕く人間よりもっと
力のある存在でなければなりません。
天におられたイエスはエホバの奇跡によって
アブラハムの家系の処女から生まれることによって、
完全な人間として地上に来られました。
そしてイエスは30歳の時バプテスマ受け、
聖なる力によってエホバから選ばれた者となり、
この時イエスは「女の子孫」の主要な部分になりました。

エホバが幾つもの預言に明らかにされたことによって、
この「子孫」は、イエスと人間から選ばれた共同統治者
14万4000人で構成されるグループだ
ということが分かっています。
現在イエスは、神の王国の王として天で統治しておられます。
そして共同統治者の14万4000人の殆どの人は
天に集められています。
まさに今、創世記3章15節で語ったエホバのプランの
最終部分にあることがわかります。

イエスは地上におられた時、
憎しみがなくなるという神の約束を含む真理を伝えていました。
そして愛が憎しみに勝てるということを、
伝えただけではなく自らの行動で示しました。

「悪人と争ってはなりません。
右の頰を平手打ちする人には,もう一方の頰も向けなさい。
あなたを法廷に連れていって内衣を取ろうとする人には,
外衣も与えなさい。
権威のある人から1キロ行くよう要求されたなら,
一緒に2キロ行きなさい。
求める人に与えなさい。
借りようとする人に背を向けてはなりません。
あなたたちは,こう命じられたのを知っています。
『隣人を愛し,敵を憎まなければならない』。
しかし私は言います。
敵を愛し続け,迫害する人のために祈り続けなさい」。
(マタイ5:38-44)

イエスは弟子たちに、
挑発に乗らず仕返ししないようにと語りました。
イエスは自分が教えたこのことを実践し、
エホバと人々に対する深い愛を示されました。

イエスはマブデスマを受けた後、
自分に与えられた役割について深く考えるために
断食を伴う40日の考えるための期間を取りました。
そこに付け込んだのがサタンで、石をパンに変えるようにとか、
高いところから飛び降りてエホバの力を試すようにとか、
自分を崇拝するなら地球上の全ての国を与える
などと誘惑しました。
しかしイエスは力強くその誘惑を退けて、
聖書の言葉を使ってサタンが間違っているということを
完璧に証明しました。

またイエスは死の直前、言われのない罪をでっち上げられ、
言葉による侮辱とか流血を伴う暴力に耐えました。
この出来事は愛が憎しみに勝てることと
どのような関係があるのでしょうか?

イエスがこれらの障害を乗り越えることによって初めて、
最初の人間が失った完全な命を、
自身の完全な命を与えることによって
取り戻すことが可能になったからです。
人類は自分では取り除けない不完全さとそれに伴う死から
解放されることになりました。

イエスは人類に最大の愛を示されたと言えます。
悪魔サタンの行いを終わらせるための
最初のステップを踏んだということができるでしょう。
サタンは、このエホバの計画が失敗に終わるよう
恐れを抱かせて命を差し出す任務から
逃げ出すよう仕向けるために、
死の直前まで苦痛を与えました。
しかしイエス・キリストはしっかりと立ち、
その企みは失敗に終わりました。

最後までこの苦しみに耐えて死なれたことによって、
サタンが女の子孫イエスの
かかとを砕くという言葉が成就しました。
しかしこれは致命傷とはならない傷です。
それはどのように証明されたでしょうか?
自分の任務を完璧に遂行したイエスを、
エホバはわずか3日後に復活させ、
本来の居場所である天へと引き上げられました。

イエスの生き方そして完全な命を捧げた死そしてこの復活は、
愛が憎しみに勝てることを示すものとなりました。
憎しみに愛の方が勝てるということを証明されました。

ではこの現在私たちは、
そのイエスに見倣うことができるでしょうか。
私たちも、憎しみより
愛が勝っていることを示すことはできるでしょうか?

キリストの教えを信じているという人々でも、
実際にはその教えに従った生き方をせず、
暴力や憎しみを抱いて生活している人はたくさんいます。
では現在、
本当の意味でイエスに見倣う人々は存在するのでしょうか?

イエスは本当の意味でご自分の教え、
愛を実践する人々のその見分け方を明らかにしています。

「私はあなたたちに新しいおきてを与えます。
それは,互いに愛し合うことです。
私があなたたちを愛した通りに,
あなたたちも互いを愛しなさい。
あなたたちの間に愛があれば,
全ての人は,あなたたちが私の弟子であることを知ります」。
(ヨハネ13:34,35)

イエスは、聖書を信じているんだと
自分から発信するということではなく、
愛に基づく行動とか、愛によって形作られた人格によって、
本当にイエスに倣っている人を見分けることができる
と言われました。

エホバやイエスが示されたこの深い愛を学んで、
それを示すことができるように
真剣に努力している人々がいるでしょうか?
実際に見られているその証拠からすると、
エホバの証人がそれに当たるということに
疑問の余地はないでしょう。
エホバの証人が勝手に主張しているのではなく、
言葉ではなくて行いによってそれを証明しています。

仲間を兄弟また姉妹と呼んで、心からの愛を示し合っています。
反対する人や迫害する人に対しても
愛を示すように真剣に努力しています。
確かに反対とか迫害の経験は喜ばしいものではありません。
しかしそれに耐えているエホバの証人は、
あることがきっかけでエホバの愛を
知ることができたのと同じように、
今は反対している家族とかまた友人が
エホバの側に付くことを願い、
辛抱強く愛を示し続けているのではないでしょうか。

証人の中には、
過去に暴力とか憎しみが身近に見られる環境で育った人や、
複雑な環境で愛を知らずに育った人たちもいます。
しかし彼らはエホバとイエスの愛を知り、
生き方を大きく変えました。

「子供の頃は大変でした。
なぜ、自由に生きられないのだろうとずっと考えていました。
自由に発言することも、
行きたいところに行くことも許されません。
ユダヤ人にはできるのに、アラブ人にはできないのです。
このままじゃダメだ。ユダヤ人を追い出してやる。
私はある反イスラエル組織の指導者になりました。
そのため、1985年から4年間服役することになりました。
なぜだ、なぜなんだと考え続けました。

しかし、あることで私の人生は大きく変わりました。
ものみの塔誌が定期的に届くようになったのです。
子供の頃からずっと探していたもの、
それは聖書の真理の中にありました。
地上から流血行為をなくせるのは神の王国だけです。
私はエホバとの関係を大切にし、
学んだことを行い続けました。
それが私を変えたのです」。

「私はユダヤ人として育てられました。
子供の頃から自分たちは選ばれた国民だと教えられます。
周囲の人たちは皆アラブ人を憎んでいました。
いいアラブ人は死んだアラブ人と言う人さえいました。
殺される前に殺せという古くからの言葉があります。
その言葉は聖書からの引用だというのです。

真理を学ぶことによって
私の中にあった偏見は全て消え去りました。
エホバは私たちがアラブ人を含めて
あらゆる背景の人を愛することを望んでおられます。
そのことを知って大変爽やかな気分になりました。
今、私はエホバの軍に加われてとても幸せです。
その軍の幾百万もの人々は戦うことによってではなく、
あらゆる国のあらゆる背景の人々の命を救うことによって
エホバに仕えているのです」。

生まれながらの環境で、
憎しみというものを吸い込まれて育ったような人々がいます。
自分を守るためには相手を殺すしかない
と教えられ続けて育ってきた人々も、
エホバとイエスについて学ぶことによって、
本当の愛というものを知り、
人格やその生き方を大きく変えたのです。

今、世界の状況はますます悪くなっていて、
暴力とか憎しみが満ちています。
しかしその状態は、今の社会体制全体の終わりが
近いことを示す証拠ともなっています。

イエスの弟子がイエスに、
体制の終わりにどういう「しるし」があるのか、
どういうものを見かけたら
その終わりが近いということがわかるのか尋ねた時、
戦争、食糧不足、地震とか
世界的な規模で起きる様々な事象についてイエスは述べました。
(マタイ24:3,7)

「またその時,多くの人が信仰を捨て,
互いに裏切り,憎み合います。
…不法なことが増えるために,大半の人の愛が冷えます」。
(マタイ24:10,12)

エホバが行動される直前には、憎しみとか愛が冷え切る状況が
見られるということをイエスは預言されました。
それは過去にない規模で、
まさに今見ることができている状態と言えます。
このエホバが行動される時は、
後にも先にも例のない大転換点となります。

まもなくイエスは、
初めの蛇であるサタンを底知れぬ深みに投げ込みます。
イエスは圧倒的な力でサタンに勝利して1000年間閉じ込めます。
そして1000年後、サタンは一時的に解放されます。
エホバの新しい体制で生活してきた人全てが平等に
最後の試みにあります。
その後イエスは、サタンとサタンと共に
エホバに敵対する子孫を完全に滅ぼします。
ここで蛇の頭を砕くことが実現し、
これをもって創世記3章15節で宣言された
エホバの壮大なプランは完遂します。
愛が憎しみに勝てるということが、
そこで完全に証明されるわけです。

私たちはそれを生きて見たいと思うのではないでしょうか。
エホバの愛に倣いそれを示し、
エホバに喜ばれる者として行動するならば、
エホバの新しい体制に迎え入れてくださいます。
そしてそこでエホバの愛や力がどのように示されるかを、
私たちは実際に見ることができます。

ではその目標を達成するために
日々努力していきたいと思います。
そしてエホバとイエスに見習って、
本当の愛をこれからも示し続けていくことにしましょう。

裏付けとなる聖書の言葉は、
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